擁壁診断の活用事例|港区 麻布地区総合支所様

擁壁診断の活用事例|港区 麻布地区総合支所様

宅地造成等規制法や国土交通省のガイドライン(※1)に基づき、構造物等の総点検(数年に1度の定期点検等)を実施・導入されている自治体がありますが、どれほど徹底した点検を行っていても、予期せぬ事象が発生するリスクは避けきれません。(一社)日本擁壁保証協会が提供する「擁壁診断」は、このようなリスクに備え、定期点検を補完する有効な手段の一つとなり得ます。

※1:国土交通省の各種情報(以下参照)

「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について
宅地造成及び特定盛土等規制法の施行に向けた準備
宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル
宅地擁壁について

今回ご紹介するのは、定期点検の補完として擁壁診断を実施いただいた港区 麻布地区総合支所様です。
住宅街やオフィスが立ち並ぶ東京都港区・麻布地区は、斜面地や坂道が多く、高低差のある地形を目にするのが日常風景の一部となっています。こうした環境下における擁壁の点検や、「宮村児童遊園」で導入いただいた「擁壁診断」の実施の経緯等について、港区 麻布地区総合支所のまちづくり課(土木担当)様にお話を伺いました。

高低差の多い地域に求められる「安全管理」

Q:擁壁診断の実施に至った背景や経緯

港区では、「港区道路施設維持管理計画(※2)」および「港区公園施設維持管理計画(※2)」に則り、日常点検や月1回の巡回点検、さらに5年に1回の定期点検を実施しています。

※2:https://www.city.minato.tokyo.jp/koukyoushisetsu/fashiritelimanezimento.html

港区の中でも麻布地区は、坂が多く、高低差のある地形や土地もあり、民地に張り付くように建てられた住宅が多いエリアです。また、古くからの住宅地も混在するため、老朽化による外観上ひび割れ等の進行状況を考慮し、擁壁の安全性についても適切な管理に努めております。
そのため、港区では定期的に総点検を実施しているものの、通学路や公園等の安全性の確保のため、追加診断を実施しました。 今回、「宮村児童遊園」で実施した「擁壁診断」は、5年に1回の定期点検の補完としての位置付けです。

Q:擁壁をはじめとしたに安全対策等ついての課題意識

「宮村児童遊園」のように、斜面に張り付くように建てられた昭和期の擁壁も麻布地区内に存在し、点検を実施する際にも一苦労しています。また、長期的なメンテナンスや大規模改修の実施について、どこから着手すべきか、どのように優先度をつけるべきか、区の立場として判断に悩むこともあります。

近年では、自然災害等を含む事故の発生の報道を目にすることもあり、擁壁等に関する問い合わせが増えている傾向もあり、住民の意識が高まっているという実感もあります。

その一方、区が管理(指定管理者制度のもとで管理)している擁壁以外、例えば、民地擁壁については、建築課の所管のもとで助成制度等の行政支援を庁内連携のもと対応を進めていますが、基本的に「住民の申請ベース」で動くため、区の管轄の範疇では積極的に介入できないケースもあります。

地震や大雨等の災害リスクが高まる中で、定期的な安全性の把握と優先的な補修判断が重要と課題意識を持っています。

Q:擁壁診断の実施までの流れ

今回の擁壁診断は以下の流れで実施に至りました。

(1)巡回点検および陳情等にて擁壁の不具合を発見
(2)(必要に応じて)擁壁に関する測量を実施
(3)擁壁点検の手法を検討
(4)擁壁点検の調査を契約、実施

老朽化インフラの早期把握と優先対応に向けた一歩

Q:擁壁診断を実施してみての感想や得られたもの

短期間での実施に加え、老朽化している擁壁において、「総合考察」だけではなく、「擁壁の位置ごとの詳細な考察」が示されており、非常に分かりやすかったです。また、現場においては、「所見」があることで関係者全体での目線合わせができ、補修の要不要や優先度をつける際の判断材料の一助とする情報を得ることができたと考えています。

Q:今後の取り組みについて

港区は、5年に1度構造物の総点検を実施しており、構造物の安全性は把握し、対策を実施しています。しかし、徹底した点検を実施していても予期せぬ事象が発生するリスクに備え、本点検(擁壁診断)を活用することで、迅速に状況を把握し、より適切な対策を検討することが可能になると考えています。 

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